システム開発の提案依頼書(RFP)の書き方とは?作成する際の5つのポイント
システム開発を進める前に、提案依頼書(RFP)を作成するケースがほとんどです。
提案依頼書を作成することで、企業の現状や課題をはじめ開発するシステムに備える機能や性能などを伝えられます。
とはいえ「どうやって提案依頼書を作成するかわからない」「書き方を知りたい」という方がいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、システム開発の提案依頼書を作成する理由をはじめ、依頼書の作成から開発までの流れや依頼書の書き方をご紹介します。
また提案依頼書を作成するときのポイントをお伝えするので、これからシステム開発を進めようかと考えている方はぜひ参考にしてください。
目次
システム開発の提案依頼書(RFP)を用意する理由とは?メリット・デメリットを解説
システム開発の提案依頼書を作成する前に、なぜ用意する必要があるのか、メリットやデメリットを理解しておくと良いでしょう。提案依頼書を用意するメリットだけではなく、デメリットも把握しておくことで、依頼書作成で失敗するリスクを未然に防げる可能性があります。
ここでは、システム開発の提案依頼書のメリットとデメリットをご紹介します。
メリット
提案依頼書を作成するメリットは、以下の通りです。
- つくりたいシステムを正確に伝えられる
- なぜシステムを開発しようと思ったのか背景がわかる
- あらためて課題を確認できる
- 方向性を明確にできる
- 書面で提示することでトラブルを防げる
- 数社からの提案の比較基準や評価方法を明確にできる
- 予算やスケジュールを明確にできる
開発したいシステムの詳細を口頭で伝える際、抜け漏れが生じるリスクが高いです。少しでもリスクを軽減するために、書面として提案依頼書を作成することで事前に抜け漏れを確認ができます。
文字として書き起こすことで、なぜシステムを開発したいのか、解決したい課題や企業の現状、これからの方向性などをあらためて認識できるメリットがあります。
デメリット
提案依頼書を作成するデメリットは、以下の通りです。
- 依頼書の作成に時間と労力がかかってしまう
- システム開発の着手までに時間がかかってしまう
念入りに提案依頼書を作成しようとすると、どうしても時間と労力がかかってしまいます。すると自然とシステム開発に着手するまで時間がかかってしまい、想定よりも完成が遅れてしまうケースがあります。
ただし、提案依頼書を省いたり疎かにしたりすると、満足できるシステムを開発できない恐れがあるでしょう。納得いくシステムを開発するためには、時間に余裕を持って提案依頼書を作成してから開発に取り掛かりましょう。
システム開発のRFPとRFIの違い
RFP(Request for Proposal)とRFI(Request for Information)は、システム開発プロジェクトにおいてベンダーや提供業者に対して情報や提案を提供してもらうための文書ですが、それぞれ異なる目的と内容を持っています。
RFPは、プロジェクトの詳細な要件や目標を含む提案依頼書です。
プロジェクトの要件や目標を詳細に示し、ベンダーに提案を提出するよう求められるケースが多いです。提供業者に対してシステムの提供に関する提案を提出するよう依頼し、ベンダーや提供業者からの提案を受けて最適な提案を選定し契約を締結する場合に役立ちます。
一方でRFIは、プロジェクトに関連する情報を収集し、提供業者の能力や提案の概要を知るための文書です。
ベンダーや提供業者の市場情報や提案のアプローチを知りたい場合に、予備情報を収集するために使用されることが多いです。そのほか、提供業者の興味や関心を確認して提案の対象となるベンダーを選定する際や、プロジェクトに関連する情報を収集してRFPの準備を行う際にも利用されます。
要するに、RFPは具体的な提案を受けるための詳細な要求事項を記載した文書であり、RFIは提供業者の情報やアプローチを知るために使われる予備情報収集の文書です。
提案依頼書(RFP)の作成から開発までの流れ
システム開発の提案依頼書を作成してから開発に進むまでの流れは、以下の通りです。
- プロジェクトチームを編成する
- システム開発を行う目的を明確にする
- 企業の現状や課題を明確にする
- 課題を解決するための対策を練る
- 提案依頼書を作成する
- 提案依頼書や見積書の受領を行う
- スケジュールを調整して開発を進める
システム開発を進めるチーム編成では、過去に似たようなシステム開発に携わったことがある方や、プログラミングなどに詳しい優秀な人材などを入れると良いでしょう。人数が多ければ多いほど、ミスや抜け漏れなどを防げる可能性が高まりますが、人件費が割高になるので注意が必要です。
またいきなり提案依頼書の作成にかかるのではなく、システム開発を行う目的や企業の現状、課題などを整理しておくことがポイントです。
システムの開発を外部に依頼する場合は、双方でスケジュールを把握してから開発に進みましょう。
システム開発の提案依頼書(RFP)の記載項目
システム開発の提案依頼書を作成する前に、記載項目を把握しておけばスムーズに作成を進められるでしょう。
ここでは、提案依頼書に記載すべき項目を5つご紹介します。
システム概要
システム概要は、提案を受けるベンダーや提供業者に対して、プロジェクトの背景や目標、システムの概要を理解させるための項目です。具体的には、なぜこのプロジェクトが必要なのか、どのような問題を解決しようとしているのか、などを明確に記載します。
そのほか、システムを利用する予定のユーザーグループ、システムの範囲やカバーする機能、システムの開発に使用する技術、プラットフォーム、ツール、言語なども記載しましょう。
提案依頼事項
提案依頼事項は、依頼者が提供を受ける提案書に対する具体的な要件を、ベンダーや提供業者に対して明示するセクションです具体的には、システムの機能、機能の優先順位、特定の要件、制約条件など、提案書が満たすべき要求事項を明示します。
提案書のフォーマットや提出方法に関する指示を示す際、提案書の提出期限や提出場所なども指定します。提案書を評価する際の基準や重要なポイントを明示する場合、提案書の評価においてどのような要素が重視されるかを記載しましょう。
提案事項の有効性は、時間経過と共に変化する可能性があります。これを担保する為に提案書提出までの期限を定めることが大切です。
提案手続き
提案手続きは、提供業者が提案書を準備して提出する際の手順やプロセスに関する情報を示すセクションです。具体的には、提案書の提出期限や提出方法、提供業者からの質問に対する回答方法や期限などを記載する必要があります。
提案書の提出方法については、提案書を郵送するのか、電子メールで送信するのか、Webプラットフォームを使用するのか、などを明確にします。
また提案に関する説明会やプレビューの日時、場所、形式、提案に関する連絡先の情報などを記載します。提案書の評価プロセスに関する情報提供では、提案書がどのように評価され、選定されるかについての概要を示す必要があるでしょう。
開発の条件
開発の条件は、提供業者との契約や協力に関する条件を示すセクションです。
提供業者との契約の範囲や内容を明示し、具体的なサービスやシステムの開発、提供する範囲、対象となるモジュールなどを記載します。提供業者が提供する成果物や納品物、それに関する納期やマイルストーンも指定しましょう。
システムの品質に関する要求事項や基準、テストや検証に関する条件を示す際には、システムが満たすべき品質水準について明確に記載しましょう。
またシステムの導入後のサポートやメンテナンスに関する条件では、バグ修正やアップデート、保守作業についての契約内容を記載します。そのほか、開発成果物や知的財産権に関する取り決め、支払い条件、契約の解除条件に関する情報も提供する必要があります。
契約事項
契約事項は、提供業者との契約に関する法的な条件や取り決めを示すセクションです。契約の締結当事者や、契約の有効期限や開始日、バグ修正やサポートに関する責任範囲などを明確にする必要があります。
知的財産権の所有権、ライセンス、利用許諾など、法的な条件を明確に定めることが大切です。法律に詳しい弁護士などに指導してもらいながら、提案依頼書を作成すると良いでしょう。
また契約に関する紛争が発生した際の解決手続きや方法を示す際、裁判所の管轄権や解決方法についての取り決めまで記載する必要があります。
システム開発の提案依頼書(RFP)の書き方
はじめてシステム開発を行う場合や参加する場合は、まず提案依頼書の書き方を把握しておきましょう。いきなり提案依頼書の作成に取り掛かるのではなく、事前準備を行うことがポイントです。
ここでは、提案依頼書の書き方を3つのステップに分けてご紹介します。
1.徹底的にヒアリングを行う
まずは、システム開発に携わる方々や企業の各部門の担当者からヒアリングを行います。ヒアリングでは、主に費用対効果についてやユーザーの特色、システムの構成について聞きます。
どのような費用対効果を期待しているのかによって、システム開発でどの部分を優先すべきか明確にできるでしょう。たとえば、集客率アップを期待している場合は、顧客を引き寄せられるコンテンツの作成などを優先して開発を進められます。
またユーザーの特色をヒアリングしておくことで、どのようなユーザー層なのか、ユーザー層に向けた有益な情報は何なのか、などを明確にできるでしょう。
2.開発するシステムの位置付けを確認する
これから開発するシステムが、どの位置付けになるのかを確認します。
たとえば、はじめてシステムを開発する場合は、新たなシステムとして単体で作動するものであることが多いでしょう。一方ですでに既存のシステムを扱っている場合は、ほかのシステムと連動するものを開発したいと思っているケースがあります。
独立したシステムを開発する場合は、限定された課題のみに着目するだけで、一見スムーズに開発が進むと捉えられます。
一方でほかのシステムと連動するシステムを開発する場合は、ほかのシステムに影響を与えるリスクがゼロであるとはいえません。そのため、システム単体の課題だけではなく、ほかのシステムに与える影響も課題として考えていかなくてはいけないでしょう。
3.基本的な構成に沿ってRFPを策定する
念入りにヒアリングを行った上で、以下のような構成に沿って提案依頼書を作成していきます。
- プロジェクトの背景や目的など
- 構築するシステムの概要
- 機能要件
- 非機能要件
- 開発条件
- 提案依頼事項
- 提案手続き
- 評価
- 契約事項
先ほど定めたシステムの位置付けは、「構築するシステムの概要」の項目に記載すると良いでしょう。あらかじめ構成を把握しておくことで、スムーズに提案依頼書を作成でき時間を削減できるメリットにつながります。
システムの種類に応じて、必要な項目を追加したり調節したりして提案依頼書を作成してください。
システム開発の提案依頼書(RFP)を作成するときのポイント5つ
システム開発の提案依頼書を作成する際、いくつか踏まえておくべきポイントがあります。ポイントを把握した上で作成を進めることで、作り直さなくてはいけないなどの事態を防げるでしょう。
ここでは、提案依頼書を作成するときのポイントを5つご紹介します。
専門用語や曖昧な言葉を使わない
システム開発では、プログラミングに詳しい方だけではなく、さまざまな方々が関わることがほとんどです。そのため、誰でも理解できるような提案依頼書を作成することが大切です。
特に、専門用語や社内用語の多用は避けましょう。誰にでもわかりやすく作成することで、わざわざ意味を調べる必要や手間がなくなるので、理解するまでに時間がかかってしまうという事態を避けられます。
また提案依頼書を作成する際には、専門家だけではなくシステム開発に携わるすべての担当者が理解できるのを目標に意識してみましょう。
曖昧な表現や言葉は、相手に十分伝わっていないことがほとんどです。たとえば、大きいや小さい、多いや少ないなどの言葉は、人によって捉え方が異なります。その場合は、可能な限り具体的な数値を用いて説明できるようにすると良いでしょう。
評価シートも作成する
提案依頼書を提示したあとは、提案してもらった内容を評価する流れが一般的です。スムーズに評価するためにも、事前に評価シートを作成しておきましょう。
評価シートが準備されていれば、提案してもらってからシートを作成する時間を省けて、システム開発に着手するまでの時間を短縮できます。
提案依頼書の評価シートは、点取表や○×表などを用いて評価する側が回答に迷ったり困ったりしないようにすることが大切です。評価シートの作成でも、最終的に評価項目の抜け漏れがないかチェックしましょう。
また評価シートが準備されていれば、評価項目が予めわかっているので、これを意識して提案依頼書を作成することがおすすめです。
たとえば、評価シートで「必要な機能がしっかり記載されている」という項目があるのにも関わらず、提案依頼書には必要機能に関する記載がひとつもない場合は、あらためて項目を追加しなくてはいけません。あらかじめ、評価シートを満たせているかどうか確認してから提示するようにしましょう。
抜け漏れやミスがないか複数人でチェックする
提案依頼書が完成したら、複数人で抜け漏れやミスがないか確認しましょう。この項目は問題ないと決めつけず、すべての項目で抜け漏れがないかチェックすることが大切です。
また曖昧な言葉や表現が用いられていないか、第三者に評価してもらうことも良いでしょう。わかりづらいところがないか、正直に話せる相手に見てもらうと効果的です。
プロジェクト名を共有する
どのようなシステムを開発するのか、それぞれが参加しているシステム開発がどれなのか、などを明確にするためにプロジェクト名を決めて共有しておきましょう。
プロジェクト名は、「〇〇プロジェクト」「〇〇システム開発」など簡単なもので十分です。過去に似たようなシステムを開発したことがある場合は、「〇〇プロジェクト2023」と年数を記載しておくとわかりやすいでしょう。
発注側や開発・制作側含め、認識の違いをなくして情報共有しやすくすることが目的です。
テンプレートやサンプルを参考にする
はじめて提案依頼書を作成する場合は、テンプレートやサンプルを参考にすることもおすすめです。
特に成功している事例のテンプレートは、良い見本となるでしょう。ほかの部門のテンプレートを参考にしたり、Web検索で調べたサンプルを参考にするだけでも十分です。
システム開発の提案依頼書(RFP)を作成する際の注意点
システム開発の提案依頼書の作成を進める前に、失敗しないようにどのような注意点があるか把握しておきましょう。
ここでは、システム開発の提案依頼書を作成する際の注意点を2つご紹介します。
完璧を求めすぎるあまりなかなか完成しない
システム開発の提案依頼書を作成する際、はじめから完璧を求めすぎると、なかなか完成しない原因となります。
完璧なドキュメントを作成しようとすると、変更や修正に対するハードルが高くなります。プロジェクトの要件や状況は変わる可能性があり、柔軟性を持った提案書の方が実際のニーズに合った提案を得ることができるでしょう。
また完璧な提案依頼書の作成が目的となってしまい、本来のシステム開発という目的を見失ってしまう恐れがあります。
提案依頼書の中心的な要求事項や目標に焦点を当てて、核心的な情報を提供して提案業者に適切な方向性を示すことが重要です。提案依頼書の詳細度と適切なバランスを保つことで、必要な情報を提供しつつ、冗長な情報を削減して効率を向上させられるでしょう。
テンプレートやサンプルに頼りすぎて必要な情報が抜けている
システム開発の提案依頼書を作成する際、テンプレートやサンプルに頼りすぎると、必要な情報が抜け落ちてしまう恐れがあります。
一般的なテンプレートやサンプルは、広範な用途に対応するために汎用的に作成されています。そのため、特定のプロジェクトのニーズや要件に合わせた詳細な情報が抜け落ちるケースがあるでしょう。
各プロジェクトは独自の要求事項や目標を持っています。テンプレートやサンプルは、全てのプロジェクトに適用できるわけではなく、特有の情報やニュアンスを反映する必要があります。
またテンプレートやサンプルに基づいて作成された提案依頼書が十分に特定のプロジェクトに合致していない場合、提案業者は混乱し、正確な提案を提出することが難しくなる可能性があるでしょう。
この場合、テンプレートやサンプルを元にしながら、プロジェクトの特有の情報や要件を適切にカスタマイズすることが重要です。テンプレートやサンプルを参考にしつつ、必要な情報を頭から作成することも検討すべきでしょう。
まとめ
システム開発の提案依頼書を作成する場合、作成に取り掛かる前にヒアリングを徹底的に行い、構成に沿って作成を進めていきましょう。
提案依頼書を用意することで、開発側と依頼側の認識の違いが生じるのを少しでも防げたり、あらためて企業の現状を理解できたりとさまざまなメリットにつながります。
また専門用語を多用しない、抜け漏れがないか複数人で最終チェックを行うなどのポイントを意識すると、より良い提案依頼書を作成できるでしょう。
しかし、提案依頼書の作成には時間や労力がかかってしまうので、スタッフの作業量が増えたり開発着手までの時間がかかってしまったりするデメリットもあります。
システム開発を検討している方は、提案依頼書の作成から開発まで時間に余裕を持って作業に取り組みましょう。